I.人の構造

人は立位を取るために、側面から眺めると身体の前面(脊柱の前)にほとんどの臓器を置く構造になりました。立位保持のため、脊柱の頚部で前方に弯曲して頭部を保護し、腰部でも前方弯曲して立位バランスを得られる長いS状カーブを描き、頭部保護の二重のクッションを作っています。
脊柱という支柱の前方にしか臓器は存在しません。脊柱に負担のない構造をとるためには、内臓をできるだけ脊柱という支柱に引き付けておくことが必要になります。

II.筋肉の働き

立位保持に働く筋肉は、抗重力筋(背柱の後方にある脊柱起立筋、大腿前面の筋‐大腿四頭筋、下腿の後方に位置する下腿三頭筋)があります。これら筋肉の動作反応時間は比較的遅いため、遅筋と呼ばれ、疲労しにくい筋肉です。手足を動かす筋肉は、速筋といい反応時間は早いが疲労蓄積しやすい筋肉です。遅筋は短縮する傾向が強く、関節の動きを制限する方向に働きます。筋肉は短縮すると、筋線維の中を流れる血液は減少し、筋肉の代謝物質を溜め、そのためさらに筋周囲組織が膨張し、血流阻害、代謝物質蓄積、疼痛発生の悪循環を招きます。
遅筋である抗重力筋は、負荷が不足すると筋萎縮が始まり、速筋に変化し疲れやすい筋肉になります。この状態は慢性の腰痛の原因になります。筋萎縮を起こさないように、筋力強化が必要になります。

II.腰痛予防

内臓を背骨に引き付け、背筋の負担を軽減し、脊柱起立筋の短縮(拘縮)を防ぐことが腰痛発生の予防になります。
1.腹筋の強化(臍を意識して常に引っ込めておく、起き上がり体操

2.背筋のストレッチング(お辞儀をして床に手を着き背筋を伸ばす、しゃがみ込み、爪先をつかみながら膝を伸ばす、坐骨神経の伸展運動)

の2つが重要です。弱い部分は補強し、固まっている部分は伸ばす、これが治療原則です。痛みがあるときから、痛みがあるから、今すぐ始めましょう。腹筋が弱く背筋が働きすぎるために、腰痛が発生しています。ですから、痛い今から直ちに、補強と柔軟性獲得の運動を始めます。痛みが強くて動けないときには、鎮痛薬、筋弛緩薬循環改善薬が痛みを和らげる手助けをいたします。
ただし腹筋の強化運動の起き上がり体操をするときには、必ず膝を立て、下肢筋肉が働かない状態にして、腹筋の強化をします。次いで背筋のストレッチング、その後で背筋の筋力強化が必要です。 背筋の強化から入りますとますます腰痛はひどくなります。順序を間違わないでください。

IV.治療方法

痛みの悪循環の図


自宅療法

痛みを除くには、血液循環の改善が一番大切になります。38~40℃の風呂に、20分以上入り身体を温め、血流を改善し、筋肉を緩め。薬の効果を高めましょう。

入浴時の注意

入浴前に、少なくとも200ml以上の水分を飲んでください。また湯上りにも同じくらいの量の水分を補います。何故ならば、入浴により汗をかきますので血液は濃縮され、循環が悪くなり、痛みの発生原因になります。

水分補給上の注意

普通の水が一番良いのですが、痛みが強いときには、痛みの原因となる代謝物質の蓄積を抑える飲み物(クエン酸―お酢―を含む)を合せて水分補給に用いることも必要です。お酢を多用した食べ物を勧めます。

睡眠時の注意

臥床時には、上向きの時は膝の下に、横向きでは膝の間に薄い枕をはさみましょう。背筋の緊張が取れ痛みは軽くなります。

日常の注意

常に意識して、臍を引っ込めて置きましょう。

腰痛の強い人には簡単な腰痛体操にて、具体的な方法を例示しています。